お茶について
- Tomokazu Ichikura
- 4月18日
- 読了時間: 3分
前回、神農(しんのうほんぞうきょう)を取り上げた際、お茶で解毒し、“喫茶の神様”でもあることをお伝えしました。
古典を見渡すとお茶にまつわる書物が出てきます。唐の時代に茶聖(ちゃせい)・陸羽(りくう)によってかかれた『茶経(ちゃきょう)』です。
上・下巻があり、上巻の「一之源 (茶の起源)」の冒頭部分は、
茶は南方の暖かい土地にできるよい木である。・・・(中略)・・・口の中が熱っぽく乾いているとき、うっとうしい時、頭痛や目やにが出る時、手足がだるくて、節々がのびやかでない時など4~5回飲むと醍醐(だいご)や甘露(かんろ)にも似た効果が出てくる
と言っています。温暖な気候の静岡や鹿児島などで銘茶が作られる場所であるのがよくわかります。
ちなみに、1717年から続く京都にある老舗“一保堂茶舗(いっぽどうちゃほ)”は『茶経』を包み紙に印刷しています。
一方、日本には『喫茶養生記(きっさようじょうき)』(1211年 鎌倉時代)という名著があります。記したのは、臨済宗(りんざいしゅう)の栄西(えいさい)という建仁寺(けんにんじ)を建立した僧侶です。茶祖(ちゃそ)とも言われています。
茶は養生の仙薬であり、寿命を延ばす妙術を備え持つものである。・・・(中略)・・・人生を全うする根源は養生である。その養生の方法は、とりもなおさず五臓を健全にすることであるが、その中心は心臓であるから、これを健康にさせるには、茶を飲むのが一番である。
と言い切っています。これを第三代将軍・源実朝(源頼朝の子)に献上し、日本に茶を広めました。
しかし、貝原益軒(かいばらえきけん)が著した『養生訓(ようじょうくん)』(1712年 江戸時代)では、巻四において、茶の功罪を説いています。
茶は気を冷やすから、一度にたくさん飲んではいけない。・・・(中略)・・・食後に熱い茶を少し飲んで、消化を助け、喉の渇きをしずめるのが良い。腎に良くないから、塩を入れてはいけない。空腹時に茶を飲んではいけない。脾胃を悪くする。濃茶を多量に飲んではいけない。新しくできる気を損ねる。中国の茶は性が強い。
茶の成分で、利尿作用のあるカフェインは、胃液の分泌を促すので、空腹を避け、食後に熱めのを少し飲むのが、非常に理にかなっています。濃茶やカフェインの多い新芽を使い濃く淹れる中国茶は、カフェインの量が増えるので、飲む量に気を付けなければいけませんね。
科学が発達した現代では、緑茶の効用について、東北大学大学院薬学研究科の平田祐介助教は日本薬学会のHPの環境・衛生トピックで
「これまでの疫学研究から、緑茶の摂取量が多い人は、がん・循環器系疾患・認知症などの発症リスクが低下することが分かってきており2)、その健康増進効果が実際に裏付けられています」
という記載をされています。
〈参考〉『茶経』 陸羽
『喫茶養生記』 栄西
『養生訓』 貝原益軒
『茶の本』 岡倉覚三 村岡博訳 岩波文庫 1929年
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