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白湯

執筆者の写真: Tomokazu IchikuraTomokazu Ichikura

ここ数日、急に暖かな日中が続き、冷たい飲み物を飲みたくなってきてるかと思います。

しかし、本当に気の進むまま飲んでしまって良いのでしょうか???


安静時における心拍出量(しんはくしゅつりょう)の血流配分は、

脳         15%

心臓        5%

肝臓および消化器系 25%、

腎臓        20%、

骨格筋       20%、

皮膚        5%、

骨・生殖器・その他 10%

です。


つまり、お腹に45%というおよそ半分が集まっているので、健康なココロとカラダであれば、横になって休めているとお腹には温もりがあります。

この「温かみ」は東洋医学でいうところの “気” に当たります。 “気” がしっかり巡っているかどうかをお腹で診ることができます。

“気” が足りないとお腹は冷えていたり、ピーンと張っていたり、緩んで凹んでいたりします。そこに冷えたものを摂り入れると、その冷えが “気” の巡りを悪くしていきます。氷は入れていないし、冷蔵庫にも入れていない “常温” だから大丈夫と思っている人が多いのですが、そういうわけではありません。しかも、いっぱい水を飲むと “美と健康” に良いと心底から思っているために、一日に飲む量を設定して飲み続けて、本当にそれでお腹を冷やしていたり、浮腫んでいる人をよくみます。

さらに、寝起きで水や青汁、スムージー、野菜ジュース、特定保健用食品のお茶などを飲んでいても、それが体温より低いのであれば、それはカラダを冷やします。良かれと思ってやっている健康法が100%良いというわけではありません。


なぜでしょうか?

それは、飲むものと体温との関係にあります。

 “常温” は、日本薬局方(にほんやっきょくほう)で確認すると、15~25度を指します。

そして、日本人の平均体温は36.89度です。(ちなみに、水銀体温計が37度で色を変えてあったのは、平均体温以上か以下かを表現するものです。あの境界は発熱の基準を示すものではないのです。)

常温のものを摂るということは、15~25度のものがカラダに入るということです。36度の体温が(35度台でも良いのですが)温度の低い方へ引っ張られるということです。


さらに、日中に比べおよそ10%基礎代謝の落ちている起床時では、体温はより低いものとなっているので、寝起きで水を飲むということは、よりカラダを冷やすことになります。

血流が悪くなり、基礎代謝が落ちて胃腸が本来の働きがしにくくなると思って良いでしょう。

そして、ちゃんとお腹が温まっていれば、摂取したもの(栄養)がしっかりと体内に吸収されて血となり肉となり骨となるはずです。


そこで白湯の登場です。 

江戸時代に流行った健康本に『養生訓(ようじょうくん)』(1712年、貝原益軒(かいばらえきけん))というのがあります。その「巻三」には、


湯は熱さを冷まして飲みやすい熱さで飲むのが良い。


とあります。

熱湯でもなく、お湯でもなく白湯なのです。水を一度沸騰させて不純物を取り去ったもので、だいたい50~60度くらいが白湯になります。ちなみに、美味しくいただける玉露の温度もそのくらいです。そのくらいの温度が一番飲みやすく、かつ不純物がないので安心して熱を体内に摂りこめます。

コーヒーの温度(70~80度)、それ以上の熱湯だとフーフーして冷ましながらチビチビとなります。グビッと飲めません。チビチビだと口や喉元で熱をとられてしまい、十分にお腹まで熱が届きません。

白湯の熱が届くと、食道や胃、腸などの内臓が温められます。体温を1度上げると、基礎代謝が12%上がると言われています。そして、体温が1度変わると免疫力が30%変わるとも言われています。

胃婁(いろう)のような経管栄養(けいかんえいよう)で栄養剤をカラダに入れる際に、まず白湯を入れることが推奨されています。つまり、白湯の持つ「温かみ」が胃腸の動きやすい状況を作り出し、しっかり栄養を摂らせ、薬の効果を発揮させることができるからなのではないでしょうか?


白湯を飲むポイントは、実体験で話をすると、春から冬にかけてのおよそ半年間、毎朝起床時に飲み続けて効果がじわじわと出てきたので、長期間にわたって続けることです(お腹の冷えと末端冷え性でした)。就寝前も加えていたら、もう少し早く効果が出たかもしれないと思っています。


〈参考〉TEXT生理学 南山堂 堀清記 (1999)

    日本人の基礎代謝資料の評価 栄養学雑誌 Vol.59 No.2 51~59 (2001)

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