厚生労働省が管理するe-ヘルスネットを読むと、不眠症が国民病になっていると指摘しています。「日本人を対象にした調査によれば、5人に1人が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答しています。加齢とともに不眠は増加します。60歳以上の方では約3人に一人が睡眠問題で悩んでいます。」
『日本生理人類学会誌』において、「入眠姿勢での寝心地が睡眠に及ぼす影響」(木暮貴政、西村泰昭、西村章、白川修一郎Vol.12、No.4、(2007))には、「入眠(にゅうみん)姿勢での寝心地は入眠潜時(にゅうみんせんじ)に影響を及ぼすよりも、睡眠の維持に及ぼす影響が異なることが示唆された」と記載しています。
スマートフォンやテレビを寝る直前まで眺めていたりすると、その刺激が大きな障害になったりすることが言われていますが、筑波大学の柳沢正史教授によると、スマートフォンの画面は小さいため影響力はあまりないとのことです。となると、あとはどの姿勢で眠りに入るのかというのがポイントになりそうです。
『養生訓』の「巻五」
夜、床に入ってまだ眠らないうちは両足を伸ばしているのが良い。眠ろうとする前に、両足をちぢめ、脇を下にして横になるのが良い。これを獅子眠(ししみん)という。
この獅子眠ですが、いわゆる「横向き寝」というものです。これは、舌の落下が起きにくく、右半身を下にすると胃腸の働きを助けます。また、心臓がある左半身を下にすると全身の血液が心臓に戻りやすくなります。
なお、そのほかの寝かたですが、次のことが言えますのでご参考にしてください。
「うつ伏せ寝」は、胸部に長時間強い圧迫を与えるため危険でありばかりでなく、眼圧を高めて緑内障(りょくないしょう)のリスクが増してしまいます。ただ短時間仮眠ではベッドで寝るより覚醒後の主観評価が良好だったとのことです。
「仰向け寝」は、血液が無理なく全身を巡るため、血栓ができにくい健康的な寝姿勢といえますが、舌が落下して気道を狭(せば)めていびきや無呼吸を起こしやすいです。
不眠や眠りについては、また別の機会で考えてみたいと思います。
〈参考〉うつ伏せ姿勢による昼休みの短時間仮眠の効果について 若島恵介、辛島光彦 東海大学紀要情報通信学部 vol.4、No1、p.40-46、(2011)
認知機能に及ぼすうつ伏せ姿勢による短時間仮眠の効果 石原金由、花田佳奈 ノートルダム清心女子大学紀要 人間生活学・児童学・食品栄養学編 39巻1号1-8ページ (2015)

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